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四季の移り替りを身近な草花や風景の写真で綴ります。

2011-6-16   落語 宿屋仇

上方、関西では「宿屋仇」 江戸、東京では「宿屋の仇討ち」「甲子侍」といい。ほぼ同じ内容の噺があります。

宿屋に泊まった町人とお侍が巻き起こす騒動で、筋は、いたって簡単。オチも単純なのですが

古典落語の醍醐味を味わえる一席なので、紹介します。

上方落語では、伊勢参りの途中、三人の旅人が、大阪日本橋の宿屋に泊まります。

静かに宿を取りたい一人旅の侍と、伊勢参りも漸く終わりに近づき、景気よくどんちゃん騒ぎをして盛り上がりたい町人

が隣り合わせに部屋を取ったのだから、たまりません。宿屋の番頭 伊八は、間に入って、振り回されます。

静かにしろと言われて、三十石船の中でふと耳にした人殺しの一件を寝物語で打ち明けますが、

侍は、それこそが自分が捜していた仇である。明朝、仇討ちにするから逃げられぬよう縛って置くようにと番頭に言い付けます。

寝物語りの途中、芝居噺風のところもあり、噺家の力量によっては、ただの爆笑ネタでなく、シリアスな面もだせるので面白い噺だと思います。

又、この噺の背景についてですが、天下の台所と謳われた大阪を代表する黒門市場日本橋」にあります。

市場の名前の由来は、江戸時代に町人町と武士が住む侍町との境に設けられた「黒門」からきています。

上方落語では一名[日本橋宿屋仇」と呼ばれるそうです。
この日本橋の宿屋という設定は、江戸時代の士農工商の身分制を暗示していますね。

仇討ち、不義密通など、封建制のもとでの道徳観を思い浮かべながら聴くと、意味深く聴くことができると思います。

伊勢参り。三十石船の断片は、大河落語「東の旅」の旅噺的要素が織り込まれていて、地理的広がりも楽しめます。

侍、番頭 町人(旅人)の演じ分けも、噺家の腕の見せ所です。
演者の噺家の解釈や工夫が、いろいろに楽しめるのも、古典落語のいい所ですね。

それにしても、町人にとっては、刀を持った侍、武士の存在は、困ったものだったのでしょうね。

落語というパロディを通して、庶民の感情が、長く語り継がれてきたのですから。